WordPressには見たことがないページがあります——AI時代に見直されているRSSの話

https://自社ドメイン/feed/

このURLを、いちど開いてみてください。WordPressで作ったサイトなら、設定した覚えがなくても、標準で用意されています。記事のタイトルや日付が並んだ、飾り気のないデータが表示されるはずです。これがRSSフィードです。

もし何も表示されなかったり、エラーが出たりした場合は、あとから止められているということです(その確認方法も後半で書きます)。どちらの結果でも、知っておく価値があります。

RSSという名前を聞いたことがない、という方も多いと思います。知らずに困ることは、これまで無かったはずです。一方、ご存じの方には「もう終わった技術では」と思われるかもしれません。半分は正しいです。 終わったのは使われ方の一部で、仕組み自体は今も動いています。しかも、いま整えておく価値があるのは、当時とは別の理由です。

1. なぜ「RSSは終わった」と言われるのか

かつてRSSは、読者が更新を追うための仕組みでした。専用のアプリに登録しておくと、新着記事が自動で届く。ブログの時代には広く使われていました。

それが衰退したのは、技術が劣っていたからではありません。

発信する側に、勧める理由がなかった

RSSで配信すると、広告は表示されず、アクセス解析にも乗らず、デザインも制御できず、読者のメールアドレスも残りません。だからメディアは、まず全文配信をやめ、次にサイトからRSSのリンクを外していきました。読者が離れる前に、発信側が先に手を引いたという順序です。

読む側に手間があった

RSSは購読先を自分で選び、整理し続ける必要があります。しかも未読が溜まっていきます。そこにSNSが現れて、選ぶ作業を代わりにやってくれるようになりました。楽なほうが選ばれるのは当然です。

推進する会社がなかった

RSSは特定企業の製品ではないので、宣伝もされず、標準の置き場所からも外されていきました。2013年にGoogleが自社のRSSリーダーを終了させたのは、その象徴として語られます。

2. 無くなったのは「RSSリーダー」

ここからが本題です。RSSには2つの側面があります。

  • 届ける仕組み ── 更新情報を、決まった形のデータにして配る
  • 読む道具 ── そのデータを受け取って、新着を並べて見せる

前の章で衰退したと書いたのは「読む道具」のほうです。ただし、これも正確ではありません。無くなったのは「何でも登録できる汎用の読む道具」だけで、用途を1つに絞ったものは、名前を変えて生き残りました。

分かりやすい例が、ポッドキャストです。

ポッドキャストアプリは、技術的にはRSSリーダーです。 番組を登録すると、アプリが定期的にフィードを見に行き、新しい回が出ていれば知らせる。かつてのRSSリーダーがブログに対してやっていたことと、同じ動きです。違うのは、扱うものを音声に絞ったことと、「RSSリーダー」と名乗らなかったことだけです。

実際、Apple Podcastsに番組を出すには、いまもRSSフィードを用意して、そのURLを登録します。それでも、聴いている人が「RSSを使っている」と意識することはありません。

もうひとつ、需要の移り先があります。メールニュースレターです。こちらは仕組みそのものは違いますが、発信側が欲しかったもの(アドレスを自分で持てる、課金できる)を満たしました。

つまり、「特定の発信を追いたい」という需要は消えていません。RSSも無くなっていません。表から名前が見えなくなっただけです。

ただし、自社サイトのフィードは、ポッドキャストとは役割が違います

ポッドキャストのフィードは、配信そのものです。 それが無ければ、番組は誰にも届きません。聴く人が実際に登録して、そこから受け取っています。

自社サイトのフィードは、そうではありません。 購読している人は、まずいません。記事は検索やSNSから読まれています。いまフィードが止まっても、読者は何も困りません。

ですから、「ポッドキャストで生きているのだから、自社サイトのフィードも読者に届く」という話にはなりません。そこは期待しないでください。

共通しているのは、届け先ではなく動き方です。

置いておくと、新しいものが出たときに、向こうから取りに来る

ポッドキャストでは、この「向こう」が聴取者のアプリでした。自社サイトでは、「向こう」にあたるのが検索エンジンです。 相手が人から機械に替わっただけで、やっていることは同じです。

そして、相手が機械に替わったことで、性質がひとつ変わりました。止まっても、誰も文句を言いません。 ポッドキャストの配信が止まれば、聴いている人からすぐ指摘が来ます。サイトのフィードが止まっても、指摘してくれる人はいません。冒頭で「開いてみてください」と書いたのは、そのためです。

これは、Webサイトに起きている変化とよく似ています。「人が直接訪れる入口」としての役割は縮小し、「機械が参照する経路」としての役割が残りました。 表から見えなくなることと、要らなくなることは違う。RSSは、その違いを10年以上早く見せた仕組みだと言えます。

3. 更新を「伝える」経路

では、いま自社のRSSフィードに何の意味があるのか。Googleに更新を知らせる経路として使えます。

検索エンジンにサイトの構成を伝える仕組みとして「XMLサイトマップ」があります。制作時に設置されていることが多いものです。XMLサイトマップとRSSフィードにはそれぞれ役割があります。

役割
XMLサイトマップサイト全体の地図。どんなページがあるかを網羅的に伝える
RSSフィード更新のお知らせ。最近何が新しくなったかを伝える

Googleは、サイトマップの形式としてRSSフィードも受け付けており、XMLサイトマップとの併用を案内しています。地図と、更新通知。役割が違うので、両方あるほうが早く正確に伝わります。

そして冒頭のとおり、WordPressのフィードは標準で用意されています(止められていなければ、の話です)。新しく作る必要はありません。やることは「生きていることを確かめて、Googleにその場所も伝えておく」だけです。費用はかかりません。

4. AIとの関係は、まだ「観測」の段階です

もうひとつ、最近言われるようになった話です。

RSSフィードは、タイトル・日付・本文・URLが決まった形で並んでいるデータです。装飾もナビゲーションも広告も入りません。機械にとっては、Webページを読むより扱いやすい形をしています。そのため、AIが情報を取り込む経路として再評価される流れがあります。

ただし、これは確立した話ではありません。 「フィードを整えればAIに引用される」という因果は、まだ証明されていません。施策として売れるようなものではない、というのが私の見方です。

すでに存在していて、費用もかからず、機械に読まれやすい形をしている。だから整えておいて損はない。 その程度の位置づけで扱うのが今のところ妥当だと思っています。

5. 全文で配信するか、抜粋にするか

WordPressの「設定 > 表示設定」には、フィードに記事の全文を載せるか、記事の冒頭だけを載せるかを設定する項目があります。

  • 全文:機械には読まれやすくなります。反面、そのまま他サイトに転載されやすくなります
  • 抜粋:複製されにくくなります。反面、機械に渡る情報は減ります

どちらが正解かは、何を大事にするかで変わります。コンテンツそのものが商品なら全文公開はせずに抜粋知られることが利益になるなら全文寄り、というのが基本的な考え方です。例えばキャンペーンやセール情報などを掲載する場合、抜粋にすると詳細がわからなくなるので全文公開がベターです。問い合わせや来店で成り立っている事業なら、多くの場合は全文でいいと思います。

6. どこでRSSを確認できる?

https://自社のドメイン/feed/ を開いてみる。 記事のタイトルや日付が並んだデータが表示されれば、フィードは生きています。何も出ない、または404が出るなら、プラグインやテーマで止められている可能性があります。

生きていることを確認できたら、その場所をGoogleに伝えておきます。 Search Console(Googleが無料で提供している、自社サイトの状態を見る管理画面)を開き、左のメニューから「サイトマップ」を選び、feed/ と入力して送信する。それだけです。1分ほどで終わり、費用もかかりません。

Search Consoleをまだ使っていない場合は、ここは後回しで構いません。まずはフィードが生きているかどうか。それが分かれば十分です。

7. 期待できないこと

  • フィードを登録したから検索順位が上がる、ということはありません。 効くのは「新しい記事に気づいてもらうまでの速さ」です
  • 汎用のRSSリーダーで購読してもらうのは、いまは現実的ではありません。 使っている人は限られています。サイトにRSSのアイコンを大きく置く必要はありません
  • 全文配信には複製のリスクが伴います。 5章のトレードオフを踏まえて決めてください

まとめ

  • RSSが衰退したのは技術の問題ではなく、発信側に勧める理由がなく、読む側に手間があったからです
  • ただし、無くなったのは 「RSSリーダー」という名前のほうです。ポッドキャストアプリは技術的にはRSSリーダーで、いまもRSSで動いています
  • ただし、自社サイトのフィードはポッドキャストとは役割が違います。購読している人はいません。読者に届く話ではありません
  • いまの使い道は購読ではなく、Googleに更新を伝える経路です。XMLサイトマップが地図、RSSが更新通知
  • 相手が機械なので、止まっても誰も指摘してくれません。だから自分で開いて確かめる意味があります
  • WordPressならフィードは標準で用意されています。 まず生きているかを確かめ、その場所を伝えるだけです

まずは、自社のドメイン/feed/ を開いてみてください。見慣れない画面が出てきたら、それは壊れているのではなく、使われていないだけです。

すでに持っているのに使われていない仕組みは、サイトの中に案外あります。外から見て、何が眠っていて、どれを起こす価値があるのかを指す。そこはお手伝いできると思っています。